日曜日。なぜかわからないが鼻炎がすさまじい。ブタクサのせい? 年がら年中ずっと鼻炎薬を飲み続けるも、薬では抑えられないことも多々あって、今年の秋冬はその傾向が強い。11月末まで暖かかったせいだろうか。
先日どしゃ降りの勤労感謝の日に狂った挙式披露宴を行った友人夫婦から引き出物としてもらったバウムクーヘンを食べた。富士山を模したおめでたいお菓子らしい。
今日は昼過ぎから、このバウムをくれた友人夫婦の結婚式2次会がある。先日の挙式披露宴は会場の予約の都合で午後スタートだったから、2次会も当日に開催してしまうと深夜まで及んでしまう。交通の便がよろしくない会場だったのと、遠方から来ていた人も多かったことから、2次会のみ別日にしたらしい。14時スタートだから、まあ夕方には帰れるだろうと見積もって、同居人には自宅で夜ご飯を食べる旨を伝えておいた。
会場はビール専門のバーを貸し切ったものだった。基本の会費は3千円で、飲み物をおかわりするたびに千円札をカウンターに渡す仕組み。飲みたい人だけ勝手に飲むようなシステムになっていた。ありがたい。私はお酒は好きだが、どうもビールだけは苦手だ。周りに合わせて最初の一杯をビールにすることは妥協しているが、飲むたびに、やっぱり駄目だと毎回思う。口に含んだ時のあの味、あの喉ごし、鼻に抜ける独特の香りを、どれだけ因数分解しても「おいしい」を導き出せない。私の中にあるのは「マズいビール」と「最大限苦痛が抑えられたビール」のみだ。
友人夫婦は無類の酒好きで、毎週のように会場となっているバーに通っているらしかった。こだわりの二次会の会場選定なのだ。最初の一杯としていただいたビール、おそらく良いビールなんだろうけど、ごめんなさい、私には何が良いのかわからない、と思いながら飲み干した。「最大限苦痛が抑えられたビール」だった。おいしく味わえなくてビールに申し訳ない。
二次会の参加者は、友人夫婦が属している社会人サークルの人が大多数で、単純な「新婦友人」として参加している人(私含む)は少数派だった。つまり、面識のない人がほとんどの会に参加せねばならなかった。
私は、すでに成熟した人間関係ができているところに少数派の新参者として投げ込まれることをひどく苦痛に感じる。知らない人ひとりひとりに罪はないけれど、集団としての「知らない人たち」は苦手なのだ。たとえば、職場の異動や部活動への入部、バイト入社などなど。学校への入学みたいに、みなが互いに知らない者同士で一から関係を構築するのなら逆に苦ではないが、既にある人間関係に入り、その中にある作法や文化を読み取ることは私にとって疲れる。異端者として弄り倒されるのも苦手だ。もういい年だから、ある程度は無難な会話や愛想笑いでその場を耐え忍ぶことはできるようになってしまったけれど、いつまで経っても平気にはなれない。
今回は社会人サークルの人たちの中に放り込まれるという苦手な環境だったが、おまけに輪をかけて苦しかったのが、特殊な酒の席であることだった。とにかくサークルの人たちが酒乱だったのだ。全員明日は仕事なんて信じられないくらい浴びるように飲酒している。(サークルの活動内容的に、落ち着いてお酒を飲む人たちだと思っていた。)
みな驚異的なペースでビールを煽り、奇声を上げて踊り狂い、酔っぱらって仲間の乳輪の毛を抜き合うような頓智気っぷりだ。主役二人は、二次会の幹事からプレゼントされた「Porn hub」と印刷されたTシャツを着させられ、みんなの前で熱烈なキッスまでさせられていた。詳細は書かないが下ネタもキツかった。下ネタが駄目なんて純情ぶるつもりがないが、初対面であまりに濃いのがくると対応に躊躇する。なんというか、ここまで絵にかいたような学生ノリの飲み会を見たのはだいぶ久々だった。でも、ここは友人夫婦の結婚を祝うめでたい席。つとめて声を上げて、手をたたいて笑った。コンパニオンってこんな感じなのかな、って少し考えた。酔っぱらった高校時代の友人(少数派の一人)がサークルの人に絡まれて「うるせ~、私だって肌に合う水のなかで息をしたいのにこんなどぶ水に入れられて…」とキレていて面白かった。
高校時代の友人たち(少数派のみなさま)と会場を抜け出したときには9時過ぎ。みな開口一番に出たことばは「疲れた」だった。結婚をめでたく思う気持ちはもちろんある、でも許してほしい。やっぱりわたし(たち)はウェイな空気には相いれないのだった。どれだけ笑って溶け込んでいるように擬態しても、私たちはあちら側へ行くことができなかった。私は苦手なものは苦手だとちゃんと言いたい。友だちの友だちは他人だった。ウェイは苦手だった。
深酒して我を忘れて狂ったようにしゃべって、そんな風にしたらきっと楽しいし、周りから見ても面白く思ってもらえるかもしれない。お酒飲みながらずっとぐるぐる何かを考えるより、明日の仕事も忘れて酩酊したほうが。でもそれが出来たとき、その人はもう既にわたしじゃない気がする。残念な人間だが、残念なまま生きるしかない。
色々思うところはあるけれど、でもみんな大人だから、めでたい空気に水を差さないよう振舞っただけでも偉い。偉いよ。そうやって讃え合いながら帰った。急に気が緩んでここちよかった。
帰宅したら0時前、倒れるように眠った。