高等遊民前夜

日記と考え事・雑感のログ

ふたりで結婚式をした

 水曜日。二人だけでささやかな挙式を行った。

 会場は水の教会。もともと挙げるつもりなんてさらさらなかったのだけど、どこかに旅行するついでに写真だけでも残そうということになった。色々と検討している中で、水の教会は二人でも挙式を行えるということを知った(そういう式場は増えているらしい)。二人ともこの教会の雰囲気が好きで、いつか行きたいと思っていたから願ったり叶ったりだったのだ。

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 自分は人の式に参列するのは好きだけれど、自分が式や披露宴を挙げたいかというとそれは別だ。自分は高いご祝儀を義務的に払ってもらってまで祝われるような人間ではないと思う。それに自分が親への形式的な感謝の手紙を読む姿を想像するのも嫌だったし、ウエディングケーキを切るときにみんなにわざわざ自分の周りに集まってもらって写真を撮ってもらうのも心苦しいと思っていた。つまりは私は捻くれていて、どこまでも自分に価値がない。そこまで卑屈にならなくても、といろんな人に言われるが、そう思ってしまうのだから仕方がない。これが私だ。

 幸い夫も式や披露宴にはこだわりのない人で、とてもありがたかった。夫の親族にも式や披露宴を行わない人が複数いて、身近にロールモデルもあったようだ。ただ夫のご両親には申し訳ないとどこかで思っていたから、せめてこうして形に残すことができてよかったな、と結果的には思う。義両親は私たちの選択を尊重してくれたが、本心ではどう思っていたのか分からない。

 式の直前に神父さんと話す時間があって、「警察の取り調べじゃないからね?」と私たちの出会いの経緯について尋問みたいに訊かれて笑えた。夫は、初めて私と会った時に口下手な自分がたくさん喋れるくらい楽しかったらしい、ということを今更ながら知った。私もきっかけは似たようなものだった。毎日がしゃべくり007と言っていいほど喋ってばかりの私たちだ。初めからずっとしゃべくり007だったらしい。


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 カメラマンの人に撮ってもらった写真は後日届く。これらは私たちのスマホを預かってくれていたスタッフさんが挙式のリハーサル中に撮ってくれたものだけど、これでも勿体無いくらいの思い出にはなったかなと思う。ポーズを取った写真より、こういう何気ないオフショットのほうが愛着が湧いたりする。ふたりだけで行う自己満足的な時間のため建物を貸し切ってしまい、いろんな人々に付き合ってもらって申し訳なくもありがたかった。

 普段ツイッターをやっていて、意外にも私と同様に盛大な披露宴をしたくない人が多いこと、したくないと思っていてもいろんな事情でする人もたくさんいることを知った。こういうコンパクトな式も選択肢として認知されたらいいなあと思うし、もちろん何もやらないという選択肢も尊重されてほしい。自分たちは結果としては二人だけで式を挙げたけれど、誰の援助も受けず、身の丈にあった出費で形に残せたから、やっぱりこの選択肢がある時代でよかったと思う。
 親族や友人を招く場を設けなかったけれど、それでもご祝儀をくれた人もいたし、無理のない範囲で祝ってくれた人もいた。育児や仕事に忙しくてそもそも会っていない友人たちもいる。それでいいと思う。

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 式のあった午前中はめちゃくちゃ土砂降りで、ここからまた波乱の幕開けという感じもあるけれど、ほどほどに頑張ろうと思う。なんだかんだで、雨の教会もとてもよかった。雨の音や森の匂いが教会の中にまで漂っていて、今日の記憶にずっと結びついている気がする。

 午後は打って変わって快晴。こんなに晴れているのに午前中は土砂降りだったなんて信じられないくらいだ。

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 境内をフラフラ歩いて水曜日は終了。今朝は5時起きだったので疲れて早めに眠った。

 ここからは裏話的というか苦労話的なアレですが、この会場を押さえるのに動き出したのはこの前の3月くらいで、ぶっちゃけ遅すぎるくらいだった。普通の人は一年以上前から動き始めるんですね。ゼクシィとか読んでなかったから知らなかった。

 説明会へ行って会場の予約状況を見てもらったらもうすでに結構埋まっていた。どうやら夏の北海道は、富良野がラベンダーのシーズンだったり、単純に避暑地需要が高まる等の理由により、夏に挙式をあげてそのまま旅行する人が結構多い様子。私たちはなんとかお盆の会場を押さえることができた。もう少し遅かったらダメだったかもしれない。
 なお、水の教会で挙式をするには、星野リゾートトマムのホテルに宿泊しないといけないという縛りがある。お盆は宿泊料が割高だが、よく分からない割引の力が働き、他のシーズンとあまり変わらない料金で挙式できるようなシステムになっているらしい。ブライダル業界は面白いな。

 次は地獄の衣装選びをしていたんですが、過度に着飾ることに興味がないうえにまさか自分が着るとも思っていなかったものを選ぶのは難しかった。選択肢があることの地獄の真髄を見た。この時ばかりは骨格診断とかパーソナルカラーとかをめちゃくちゃ研究して、自分に合うものをある程度絞って試着していったのだけど、意外にも自分に似合わないと思っていたものが似合ったりして、枠に当てはめるのは便利だけど信用しすぎてもいけないなと思ったりした。

 このころからアクセサリーとかベールとかも集めなきゃ、という話になり、メルカリや各種ネットショップで色々物色し出した。仕事しながら空いている時間にひたすら能動的に行うネットパトロールは思いの外地獄だった。結婚式でゲストを呼ぶ人はもっともっと準備があるだろうから大変だ。自分には無理。


(血眼になってネットを漁り、見つけて一目惚れした枝みたいな髪飾り)

 ブーケは名古屋のドライフラワー専門店「ある日」さんでオーダーし、野生味あふれるかっこいいブーケにしてもらった。式に合わせて宅配で会場に持ち込んだのだ。

 「グリーンをメインで」という雑なオーダーだったにも関わらず、むせ返るような鬱蒼としたかっこいい雰囲気にしてもらえた。ブートニアもセットで。費用も確か合わせて1万5千円くらいで、自分としては5万でも6万でも出す覚悟でオーダーしたから、こんなに素敵なのにそんなお手頃でいいんですか、と動揺した記憶。挙式は生花を用いる人が多いと思うけれど、選択肢としてドライフラワーもありだなあと思う(水の教会はドライフラワーなら持ち込み可だった)。とてもいいお店なのでご近所の人はぜひ。

 式の準備、めちゃくちゃ大変だったな。決めないといけないことが色々あり、そのそれぞれに期限があって同時進行で進めないといけなくて、普通に仕事みたいだった。二人だけのミニマルな式とはいえ半年弱、常に頭の片隅に「決めなきゃ、決めなきゃ…」とこだましていて鬱々としていた。(それでも水の教会ネット上でのやり取りで決められることも多く楽だったのだが。)
 二人で式をするなんて贅沢すぎて自分では絶対にしないだろうと思っていたけれど、結果としては式をすることで宿泊も割引が効き、写真も一緒に撮ってもらえて、かえって出費を抑えられた。こういうことはお金ではないけれども。式場予約自体もタイミングを狙ったのでいろいろ割り引いてもらえた。多分、式の費用は衣装や会場費や写真撮影も全部込み込みで80万円行かなかったんじゃないかな。普通に披露宴までやったら何百万の世界だから。

 ともあれ、式が終わっていい思い出になったな、という感慨と同時に、ようやく式のあれこれから解放されたという喜びがある。この苦労も含めていい記憶になるといいが。