高等遊民前夜

日記と考え事・雑感のログ

柴田聡子を聴きに行ってきた

 金曜日。私が大好きで敬愛してやまない柴田聡子(敬称略)が名古屋にライブに来てくれるので定時退社をして向かう。

 柴田聡子は2024年の初っ端から「Your Favorite Things」という今年ダントツ一位になるであろう、とんでもなく素晴らしいチョ~カッコいいアルバムを発表していて、今回のツアーはこのアルバムを引っさげたものだ。ライブのチケットはアルバム発売前に買ったものだけれど、結果的にはライブに行く選択をしていた私は正しかった。(アルバムの内容如何は関係なく、私が柴田聡子のライブへ行くのは圧倒的に正解なのだが。)

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 私が大学生の頃にも、柴田聡子がちょっと流行って、一部の音楽通がこぞって聞いていた時期がある。「後悔」がスマッシュヒットして、テレビ番組にも出たりしていたころだ。その頃の柴田聡子の楽曲がガーリーで、ちょっと懐メロっぽいイメージが先行していたように思う。でも、今回の新譜はとにかくクールでメロウで、ラップっぽさもあって、どことなく気だるげでかっこいい。前作の「ぼちぼち銀河」もカッコよかったけど、そのカッコよさが弾けて突き抜けた感じ。リアルタイムでこの音楽を聴けることを本当に幸福に思った。
 そして実際の柴田聡子もカッコいい。あのカッコよさは実際にライブで見ないと伝わらないところが多分にあるけれど、サバサバしていて自然体で、何だろう、本当にとにかくカッコいいと表現するしかないのだ。こんなカッコいいライブに私は一人で来ている。誰かに布教して連れてきたかった、せめて、夫を引きずってでも連れてきたかった。

 ライブは新譜以外の楽曲を途中で挟みつつも、新譜の曲はアルバムの収録順にそのまま披露された。アルバムの曲順がこれ以外にあり得ないというくらいには隙が無い最高に完ぺきなものだったから、ああやっぱりライブでもそうだよね、とうれしくなった。とにかく最高のライブだった。

 

 話はそれて、私が「音楽の神様」のように思っている不思議な人の話をする。この場合の、神様というのはイエスみたいな一神教の神ではなくて、もっと日本的な、ものに宿る精霊のようなイメージだ。

 私は名古屋を中心にいろんなライブに足を通っているが、とりわけインディー音楽の公演に足を運ぶと、必ずと言っていいほど見るお客さんがいる。良質なインディー音楽に宿る神様だ。その人は男性で、外見はよくいる西洋人というような感じ。銀縁の眼鏡をかけていて、髪は落ち着いたアッシュブラウン、ハリー・ポッターのような髪型をしている。つまり、外国人のお兄さんだ。
 私はこの人をこの数年間で何回見たかわからない。でも、ただ単に外国人だからなんとなく目についていただけで、もしかしたら毎回別人かもしれない。だから確信を持てないでいた。ライブ会場でその人を見かけたとき、夫にもその神様のことを聞いてみたが、「確かに前にも見たことある気がするけど、気のせいじゃない?」と言われてしまっていた。銀縁をかけた茶髪の西洋人男性という特徴だけなら名古屋市内にはいくらでもいる。

 話は戻り、柴田聡子の素晴らしいライブを終えて、記念に会場入り口のポスターを撮影してライブハウスを後にした。地下鉄に乗って先ほどの写真を確認していると、なんと、これまで見たことのあるあの西洋人のお兄さんが偶然映り込んでいたのだ。私は柴田聡子もお兄さんの守備範囲であったことに驚きつつ、それ以上に、神様のように実態のあやふやだった存在を写真に収めてしまった驚きを隠せなかった。そこに映っていた人は、確かに私がこれまでいろんなライブ会場で見たあの西洋人のお兄さんそのものだったのだ。きっと、インディー音楽をこよなく愛する音楽ファンなんだろうと思う。いい音楽のライブ会場に無差別に訪れる存在で、そういった意味で本当に神様みたいだなと感じている。だからか、自分が足を運んだ会場にあのお兄さんがいるととても誇らしくなるのだ。この音楽、とてもいいよね、と。

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(記念に撮った写真。お兄さんの姿はトリミングしてあるが、このすぐ左に写っていた。)