高等遊民前夜

日記と考え事・雑感のログ

逡巡を終わらせたい

 火曜日。急速に季節が変遷している。朝は想定外に肌寒いし、昼になるとなんだか暑苦しい。一年のうちに「真にちょうどいい気温の日」は数日しかないこの国で、今年も秋もその貴重な数日が行方不明のまま冬になってしまいそうだ。昨日職場でもらった柿を食べた。形からして筆柿だ。この形はどうも干し柿のイメージがあるらしいが、生で食べてもおいしい品種だ(渋いのもある)。レモン汁を垂らして食べる。あまり知られていないけれど、柿はレモンがとてもよく合っておいしい。

 同業他社で働いている知り合いから、その職場で求人募集をしているとの情報をもらった。エージェントを通して採用活動をしているようで、公には開示されていないらしい。登録している転職サイトで調べてみると、教えてもらった通りの求人が見つかった。同業ではあるが、求人にある職場のほうが規模が小さく、給与がとてもいい。仮に私の今の職場と同等の忙しさだとしても、まず所得増が見込まれる。つまり、とても条件がいいのだ。

 採用人数1名。しかも応募締め切りは一週間もない。人気のある求人で、あまり応募者が殺到しても困るから締め切りが速いのだろうと思う。採用人数1名。倍率はどれほどになるだろうか。短い募集期間でもたくさんの応募が来て、いろいろな人が来るなかで、私の勝ち目はあるだろうか。男性の応募者がいる場合、絶妙な年齢で産休・育休の可能性がある女の私を雇用者はあえて欲しがるだろうか。採用人数1名。ダメ元で応募するべきか。締め切りまで一週間もないから逡巡してもいられない。でも、椅子が一つしかない公募のために書類をそろえて苦心する気力をふりしぼる余裕が、いまの私にあるだろうか。

 決断をするのも何かをはじめるのも、いつもしんどい。

 現在の仕事に就いたとき、私は安定とリストラの危険性のないことを理由に、決して良くはない収入を甘んじて受けいれた。内定をもらった職場の中でもっとも年収が少なかったが、福利厚生も豊富で、残業も他業種に比べたら少なく、余暇を楽しみながら生きていけると思ったのだ。今の職場は自分で選択して選んだのだ。(現実はそれほど甘くなく、致死量のサービス残業をやることになるのだから世の中は怖い。)数年後には転職を考えるなど、入職時の私は思いもしなかっただろう。でも、やはり、どうせブラックであるなら、ストレスフルであるなら、収入が大いに越したことはない。

 最近夜は毎日少しずつDIYで植物用の育成棚を作っている。普段は屋外で育てているけれど、そろそろ冬支度を始めないといけない。寒さに強い品種以外は家の中に避難させる予定だ。既製品の突っ張り式の棚を買い、電球用のソケットを買い、育成ライトを買い、手を変え品を変え、ああでもないこうでもないと試行錯誤する時間は嫌いではない。目の前のことだけに無心になれる時間は好きだ。こういった小さな決断を繰り返すのは得意だけれど、転職みたいな大きな決断はつらい。みんなそうだろうけど。
 特に育成ライトは高い。屋内は太陽の光が届かないし、窓越しに日光が入ってきたとしても十分ではない。植物には影でも育つ「耐陰性」の強い品種もあるが、日光が好きな植物には専用の育成ライトが必須だ。一個1万円近くするライトをとりあえず4つ買ったが、もっとあってもいいような気がする。また頑張って働かなければ。予算的な都合もあるから、可能な範囲で理想に近づけていきたい。