高等遊民前夜

日記と考え事・雑感のログ

枯れ果てた井戸?

 月曜日。暑い。日本が地球が夏を先取りし過ぎて暑い。嫌だ。夏には申し訳ないが夏が一番憎たらしい季節だ。でも朝晩は驚くほど冷気が流れ込み、四季を一日のうちに縮めた捩じ込んだ感じで寒暖差に疲れている。まだ月曜日だと言うのに。

 ベランダのオリーブが開花した。


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去年は家の中に入れて冬越ししたから、部屋の中の暖かさで2月ごろに開花してしまい、オリーブには申し訳ないことをした。この冬は完全に屋外で育ててみたが、冬の寒さに負けることなく春に正しく花が咲いた。よかった。

 これまでは寒暖差にそこまでやられることは無かったけれど、今年の春はダメージを受けていることを明確に実感している。大して疲弊するような業務をしなかった日も、帰宅すると得も言われず体が重い。寝つきが良いのはいいことだが、帰宅してからは私に課されたものの多くが身に入らない。弛んでいてはダメだ、と脳筋になって自分に鞭打って頑張るも、やはりどうにも疲れ果てていて寝込んでしまう。

 「疲れ果てる」を意味する英単語にexhaustがあるが、語源はラテン語で、「水を汲み出す」という意味になるという。つまり、水を汲んで汲んで枯れ果てた井戸のような状態をexhausted(疲れ果てた)と言うのだ。そうそう正にそんな感じ。私は枯れ切って疲れてしまっている。

 帰宅してスーパーへ行こうとすると、正に夏って感じに暮れていた。19時台でこんなにも明るい。

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 スーパーでスライスチーズを買おうとしたら7枚入で278円に値上げしていた。これならコンビニで買った方が安いか、同等の値段だ。チーズが好きで毎日食べないと死ぬので辛い。一枚あたりのグラム数が少ない格安チーズを買おうとしたけど、目先の欲のために粗悪品に手を出す意地汚さに気後れがしてやめた。給与は据え置きのままだ。仕方なしに茹でたもやしにポン酢をかけて食べた。

 私の預金口座には五百万円強のお金が貯まっている。それを見ながら、私は「お金がない」と言って、茹でたもやしを食べている。この貯蓄額は名古屋市在住ひとり暮らしの女として多いのかどうか分からない。

 「お金がない」が口癖の両親のもとで育ったせいか、お金を使うことが根源的に怖い。お金は大切であることを過剰に刷り込まれて生きてきた。バブル崩壊後に生まれたせいかもしれない。お金が大切だという両親は圧倒的に正しいけれど、それがずっと苦しいのだ。たまに家族で、滅多に行かない回転寿司に行ったりして、家族が寿司をパクパク食べると、幼い私は、食後に一家心中が待っているのではないかと恐ろしくなって大泣きしたこともあった。私は、我が家が貧乏であると信じていた。ものすごい強度で信じ切っていた。

  今はちゃんと働いて、それなりに稼いでいるのだからいいのだ。これからたくさん稼いで、自分が欲しかったものを自分に与えてやればいいのだ。そう思っていたのに、私は五百万強の貯蓄を積み上げ、「お金がない」と言って茹でたもやしを食べている。あの家で育った私は、貯金を切り崩すことができない。そして、私はこれが呪いであると分かっていた。

 いつか、ささやかな呪いと共に生きている人たちで集まって座談会でも開いて、お互いの呪いのあるあるを言い合って、笑いに昇華したら楽しいんじゃないかと想像する。その機会が来たら、どうぞよろしくお願いします。