高等遊民前夜

日記と考え事・雑感のログ

愛されキャラ

 木曜日。文化の日。昼から同居人と刈谷市美術館へ行った。名古屋からは絶妙に行きづらいから車で向かう。「11ぴきのねこ」でお馴染みの馬場のぼる展が刈谷市に来ていたのだ。私は昔から美術館へ行くのが好きで、一人でどこへでも行った。高校時代には、学生証を見せれば地元の美術館に無料で入れたものだから足繁く通った。同居人はひとりでそういうところに行くタイプの人ではないが、誘ったらノリノリで車を出してくれた。愛すべきミーハーなのだ。

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 刈谷市美術館に到着。祝日だから国旗掲揚していると思ったら、よく見るとニャゴの旗だった。刈谷市美術館は特別大きな美術館ではないけれど、私の記憶の中では、絵本や児童書や漫画の作者の展示に力を入れている印象がむかしからある。エリック・カール展やレオレオニ展、岩崎ちひろ展や内藤ルネ展などが思い出される。馬場のぼるは人気があるから名古屋の大きな博物館でやらないのはなぜだろうと思うけれど、刈谷市学芸員さんが力を入れてがんばったのかな、と想像してみる。

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 消毒用のアルコールにも折り紙で作った猫が貼ってあり、細部までとことん気合が入っている。美術館は子供連れの家族や全身をニャゴの服でコーディネートした熱狂的ファンでごった返しており、とても混んでいた。地方に人を呼べるコンテンツの強さを思う。

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 同居人は実家にたくさん絵本や児童書がある環境ですくすく育ったらしく、国内外の作品を問わず、子供向けのコンテンツが今も昔も好きらしかった。こういう絵本や児童書は、大人になってから読んだ方が刺さったりするから面白いと思っているからよくわかる。

 ニャゴの絵はすごくいっぱい用意されていて、人でごった返していた。時速10メートルも進まないんじゃないかって行列に続いて絵を見ていく。かわいいかわいい言いながら眺めた。でも食べ物のことしか考えていないニャゴたちはなかなかにスリラーだった。子供向けの話って大人が冷静に見ると怖かったりする。そもそも同じ顔の猫が獲物の鳥を、みんな同じ張り付いたような笑顔で見てるなんてかなりサイケだ。かわいいけど。何がこの猫たちを愛されキャラにしたんだろう。あの狂気ゆえだろうか。
 11ぴきのねこ、海外では「Eleven Hungry Cats」だと紹介されていた。実際そういう話なんだけど、タイトルに腹ペコ感が強調されていて面白い。

 展示は「11ぴきのねこ」はもちろん、他の漫画や絵本の展示もされていた。それらの絵を見ていたら同居人が「この絵、見たことある気がする。なんか昔、すごく好きだった絵本があって、ふろふき大根をひたすら食べる変な話だったんだけど…」と言い出して、(なんじゃそら)と思っていたら本当にその絵本の展示があってびっくりした。同居人がその本を読んでいたのなんて30年近く前のはずだ。幼いキッズの記憶に深く楔をうがつようなコンテンツの強さを思う。

 馬場のぼるは作家生活をとおして猫をたくさん描いていたからか、作家仲間から「猫馬場(ねこばば)」と呼ばれ親しまれたという強いエピソードもあって最高だった。昭和の頃のあの遠慮皆無なあだ名文化、楽しいよね。私もそんなキテレツなあだ名が欲しい。

 図録とグッズを少々買って買える。閉館間際になっても物販待ちの行列がすごくて、開館時間を延長するというアナウンスが流れていた。神采配。

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