土曜日。ペーパードライバーな職場の同期たちふたりとレンタカーで運転の練習がてら愛知県内の渓谷に行くことになった。11時に名古屋市内のトヨタレンタカーに集合。私は日頃から運転をしているので助手席要員。渓谷といっても小規模のもので、バーベキュー施設や鱒の釣り場と一緒になったレジャー施設みたいになっていて、県内のちょっとした避暑地的な位置付けらしい。愛知県は山間部がそれなりにあり、県境側はかなり未開の地感がある。それでいて名古屋市内から下道で2時間程度のちょうど良い距離だ。
13時過ぎに到着。ほとんど同期たちが運転してくれた。私は狭い道の運転と駐車だけした。外気温はそれほど涼しいと感じないが、川に沿って遊歩道が整備されていて、川沿いを歩くとかなり涼しく感じた。水が綺麗で透明度が高く、水深が浅いところでは水があるかどうかもよく見えないほどだった。
きれいな水を見るのは好きだ。海でも川でも湖でもなんでも好き。川を見ていると日食なつこさんの「水流のロック」という曲が浮かんでくる。停滞している日々の生きづらさや葛藤を拾い上げてくれる曲だ。名曲だと思っている。
流れていく水をいつまでも見ていられると言ったら同期に老婆扱いされた。きれいな水をただ見ているだけで賃金が発生するような資本主義的革命がおきたりしないだろうか、とちょっと本気で思う。私たちは日ごろの労働に疲れ果てていた。その割に、私たち同期は上の世代に比べてまだ退職した人が少ないのは諦めのせいかもしれない。ここを辞めたらもっといい場所があるという希望がまるで持てない。水に触れるとかなり冷たい。日光が差し込む明るい場所では、きれいな川ならではの青い滝つぼもあった。
川沿いを30分ほど散策をしたら涼しいとはいえ汗が噴き出てきたので、車へ戻り食事が取れるところを探し、見つけた人気店らしい蕎麦屋に入った。ちょうど客の入れ替わりどきだったのか並ぶことなく入れた。
蕎麦も美味しかったけど、セットのいちじくの天ぷらとアボカドの天ぷらが食べたことのない味すぎて美味しかった。特にアボカド、半分に切った皮付きのアボカドの凹みにチーズを入れ、大葉で蓋をしたものを丸々天ぷらにしてあり、スプーンで掬って食べよという料理だった。これがまたとても美味しくて罪の味がした。家で真似がしたいけれどハードルが高い。
渓谷付近はかき氷ロードと称した地域になっていて、いろんな飲食店がかき氷を出している。食後にかき氷を食べたくなって目星をつけていたお店に移動し、かき氷を注文したと思ったらなぜかパフェが出てきて一同困惑した。どうやら一軒隣のお店に間違えて入っていたらしい。全員疲れている。
大きなパフェを食べて満腹になった後は、再び同期たちの運転で名古屋市へ戻る。うち1人の同期は運転に緊張しすぎて途中でアクセルを踏む右足がつっていた。その同期は、たとえば旅行に行ったときに旅先でレンタカーを運転して行動範囲を広げたいらしい。もう一人の同期も大体同じ理由。一緒にいった二人の同期は私とちがい車を持っておらず、いっぽうで名古屋市内の暮らしは車なんてなくてもそれなりに快適だ。それでも、車に乗れないのと乗らないのでは明確な違いがあるんだろうなと思う。いつでも車に乗れる(自信がある)というのはそれだけで重要なんだろう、だから同期たちは名目を作ってでも運転の練習をして、いつかに備えているんだろう。