高等遊民前夜

日記と考え事・雑感のログ

ナメて事務職なんかに就くからこうなる

 金曜日深夜。唐突ですが、事務として働いています。あこがれる人も多いであろう、正規雇用でホワイトだと言われている職場です。ですが、最近とても忙しく過ごしているので、せっかくだから近況をここに残しておこうと思う。昨年度も多忙だったわけですが今年度はさらにパワーアップしている。もし正規雇用の事務になりたい、もしくは興味ある人がいたら,正規事務のイチ事例としてぜひ読んでください。

 まず業務量なんですが、10倍以上に増えている。とんでもなくハイペース。もちろん仕事は全てを定量化して数えられるものではない。仕事の内容や性質によって大変さは変わるからだ。ただ、件数で数えられるだけでも昨年度の10倍以上に増えているという事実はある。
 (言っておきますが、これ、霞〇関じゃないですからね。地方の事務ですよ。わたしは国を動かすために夜遅くまで働いている霞が〇の官僚なんかじゃなくて、普通の人です。普通の人ですが、正規雇用で事務になろうとしたばかりにこれです。オイ、職場説明会で「職員の残業は月平均10時間です」って言った当時の偉いやつ、まったく嘘っぱちじゃないかって思う。)

 なぜこんなにも仕事がハイペースで増えているのか。いろいろな要因で説明できるけれど、最も有力なのは、おそらく時代の流れによって世間の人々に、いろんな制度があることが広まり、目的に応じてさまざまな申請を行うことができると広く認知されたことにある。ネットは便利だ。ニッチな情報まで書いてある。私の仕事に関することに限らず、これまでごく一部の人しか知らなかった手段が、報道の力やネットの情報網により広まった。それはそれで素晴らしいことだと思う。手段を知らず、泣き寝入りする人が減るのだから。(私の職場の場合も、最寄り駅から窓口への行き方、申請のコツなどが丁寧に有志のネット記事で解説されていた。)ただ、時代の変化と共に変わらなければいけない窓口側が、時代の流れについて行けていない。

 これだけ仕事が増えても、人件費削減のため人は減られていくもちろん私と上司は人員配置を要求している。でも増やしてもらえない。お金がないからだそう。だから業務効率化して残業を減らすように、ということを何度も何度も言われてきた。でもですね、もうとっくにそんなのはやっていて、もう自分たちの創意工夫ではどうにもならないところまで来ているから悲鳴を上げている。他の部署でどんどん人がメンタル疾患や過労で倒れても、何が何でも増えない。業務量が絶対的に多すぎるのだ。帰宅しても仕事をし、土日も仕事をするという暮らしをしている。時にはタクシーで帰り、時には朝まで仕事して始発で帰ることもある暮らしだ。そろそろその辺の車に火をつけて暴徒化したって誰も私たちを咎めないんじゃないかとさえ思う。さすがに咎められるか。

 ところで、毎日ほぼ終電帰りをしているとどんな暮らしになるかというと、1日の中から私生活が消える。極限まで消える。私の場合、毎日退勤はだいたい0時前後で、帰宅しても残務をし,寝て起きて朝5時半には起床して身支度をし出勤しなければいけない。帰宅して趣味はおろか、最低限の掃除や洗濯や自炊すらできなくなってくる。掃除洗濯は週末まとめてやるとして、問題は食事だ。さすがに食べないと死ぬから食べるが作っている時間はない。我が家の場合、通勤圏内に24時間営業のスーパーがないため、帰りによって総菜を買うこともできない。体は正直でこの2年で胃潰瘍に二度見舞われた。腎盂腎炎は1回。膀胱炎は3回。体重は落ちた(というより筋肉量が減った)し、もう何をしていても怠い。これまで倒れずに働いていられたのは紛れもなく肉体が強靭であるからなのだが、それもそろそろ限界だ。食生活が終わっている。ここまで来ると「飽きる」という概念はなくなり、ただただ無の境地です。おいしいもまずいもうれしいもない無の境地です。

 そんなブラック業務の温床になっている職場ではどんなことが起きるかというと、昨日までいた人が急に座席表から消えたり、急に蒸発したり、不意に自殺者が出たり、そういったことが起こります。トイレに駆け込んで泣き出す人に遭遇したり、コピー機が詰まって発狂する上司に八つ当たりされたり、22時に帰宅して2時に出勤する人が出てきたりします。もはや現世にして地獄の様相です。
 ともかくも、このままでは本当に私も死にかねないから、どうにかしないといけない。選択肢としては「辞める」か「業務改善のために闘う」かだ。このまま辞めてフェードアウトしてもいいけど、たぶん後任が同じように苦しむだけだから、私は今のところ「業務改善のために闘う」を行っている。でも、このまま状況が変わらない限り、辞めるしかないかな~と最近では思いつつある。「異動希望だせばいいんじゃない?」という声もあるけど、もうこの職場に未来はないかなって感じもある。

これから正規の事務職を目指すだれかへ

 書き連ねたブラック業務の実態を読んでそれでも軽率に事務職になりたい人なんていないと思うが、それでと私のもとには大学・大学院の後輩から「受かるにはどうしたらいいか?」と希望に満ちた面持ちで質問をされることが減らない。私のブラック就業状況を知っててなぜ?と不思議に思うが,その感じを見るに、やっぱり事務職というのは現代の理想郷のような、限りなくホワイトで安定しているという夢を見せるものなんだろうなって思う。身近にブラックな働き方をしている人がいたとしてもそれは稀有な例であり、自分はホワイトに働けるはずだって信じてしまうのだろう。(そりゃ私にだって事務が理想郷だって信じていたころがありますよ。ほどほどに働き、趣味や自分の時間を大切にしたいと思っていたころが。)もはや「事務は平和だって信じていたい」という気持ちのほうが強いんじゃ?とさえ思う。信仰としての事務職。ホワイトな事務職(正規)という形の祈り。

 だからこそはっきり書いておきたいんですが、この時代において安定的に「おだやかに座って、書類作成とかして、電話出たりして、ほぼ定時に帰れる平和なデスクワークの事務職員」というのは、正規雇用ではありえないと私は思っています。ほとんど虚像というか幻に近い感じ。たとえこういう仕事があったとしても、現在においてはほぼすべて非正規雇用に置き換わっています。最近では非正規が正規の仕事まで被ることが多いのだから、正規雇用がこんな楽な仕事で終わるなんて幻想です。今の正規事務はなんでもありのオールマイティー・ハイパーマルチタスク業務、専門性もクソもない。文学部卒の私が法務やらされている時点でお察しですよ。そして今や事務は、人間関係のかたまり、交渉と折衝の純粋培養だと思ったほうがいいと思う。もはや人間関係そのものが仕事だ。だから人間関係がダメだった時にコミュ障や引っ込み思案はもれなく死ぬ。
 こういう話をすると「私の周りには定時帰りの事務職がいる」とか何とか言われることもありますが、それは異動ガチャ等であたりを引いた類まれなるラッキー事例か、仕事をしていないだけの人かのどっちか。弊職場において早く帰れている人は、業務の少ないハイパーホワイトラッキー部署の人か、仕事を一切やらない心臓強すぎ職員か、仕事を人に押し付けるパワハラ気質か。大体このいずれかです。ひどく優秀な人もたまにいますが。あたりを引けばホワイトですが、外れを引けば私になります。そして、ラッキーなことに真のホワイト事務職を得られた人は並大抵のことでは辞めません。だから求人なんてかかりません。ポケモンの「マボロシじま」みたいなもんです。もちろん、弊職場のドアは開かれておりますので、いつでも中途採用募集中です。自分がホワイトな働き方ができると夢見て応募するような場所ではないと思う。リスクが高すぎる。

 だからほんとに、こういう実態を知って就職するのならいいのでしょうけど、ラッキー事例ばかりを夢見て就職すると、本当に痛い目を見る。就活時代の私を往復ビンタしたい気持ち。友人知人、お子様や身内にこの職業を目指している人がいるなら、現実を教えてあげてください。それでも覚悟の上で志望するなら止めませんが…泥舟を前にしても理想郷を信じていたい人もおりますので…。
 就活していた当時の私は幸運にも得られた複数の内定のうち、どう見ても一番ホワイトな職場を選んだはずだったのだ。私は仕事で地位を高めることに自己実現を求めていない。仕事のためにプライベートを犠牲にするなんてごめんで、余暇を楽しむための仕事を探した。それでこうなった。民間に就職していたら良かったのかというとそれも違うようで、知人たちも民間でそれぞれ身を粉にして働いている。みんながみんな忙しくて疲弊している。もはや平和に働ける安定した雇用なんてこの国にはないのかも。職業選択って難しいな。どこでどう働いたら平穏に安定して働けるのだろう。人生難しい。

 

 ローソンで買ったロールケーキ、めちゃくちゃおいしかったからシェアハピです。

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(死ぬほどお世話になっているうどんを宣伝。スガキヤさんいつも感謝!)

(↓過去にも同じようなことを言っていました。過去の私もやはり私だ)