月曜日。11月になってしまった。早い。起床すると窓の外に朝焼けが見られるようになってきた。季節がうつろい着実に日が短くなっている。朝なのに夕方みたいな部屋になり、定時に帰ってきたみたいだ。仕事に行きたくない。家を出る前から帰りたい。
先日、大好きなツイッターランドで「事務職」がトレンドに上がっていて、同じ事務職の身としてはめちゃくちゃ嬉しく思う。事務職って、基本的にPCの前に座ってデータ入力したり、書類を作成したり、簡単な電話対応をするお仕事で、コーヒーとか紅茶飲みながら穏やか勤務、そして比較的定時に帰りやすいみたいなイメージが未だに根強くて、それが非常勤やパートでも従事しやすい職業イメージにもつながっていると思う。でも実際はそんなことは無くて、もはや事務に任せられるのは単純作業だけではないんですよね(募集内容によるとは思う)。そういった現実がトレンドに上がることで広がっていけばいいよなって思う。
私の職場に限った話をすると、私は総務系の事務をやっている。内勤だから基本的には空調の効いた室内にいるし、座り仕事だ。外回りをする営業職や現場系の仕事よりは体力的な負荷が少ないのは確かだ。その部分は認める。
でも総務というのは平たく言えば「なんでも屋」で、「財務」とか「経理」とか、業務内容が明確に定義されている部署からあぶれた雑多な仕事をなんでも対応しなければいけない部署だと思っていただければいいと思う。電話は常になりっぱなし、メールはどんどん溜まっていく傍らで、常に文書の作成作業は発生して、イレギュラー対応が毎日毎日置き続ける毎日という感じ。ひどいとトイレに行くのも憚られ、昼食さえ取れない状況になります。そんな事務員の現実を表現した秀逸な画像がこれなんですが、
事務員さんは楽じゃない #現場猫 pic.twitter.com/ibyFl5ye4t
— からあげのるつぼ (@karaage_rutsubo) 2021年6月12日
正しくこれです。本当にこれ。これ以上はありますが、これ以下はない。断言できます。小さい仕事から大きな仕事まで、常にあらゆる案件が同時並行で進んでいくのです。歴史の授業で、アヘン戦争の最中、日本では天保の改革で水野忠邦が頑張ってた~みたいに、同時並行で物事をとらえる問題とかあったと思うのですが、ああいうのが苦手な人にはひどく苦痛なのが事務仕事だと最近は思います。私は苦手です。雑多に案件を抱えすぎて、「そういえば案件はどうなっていたっけ?」が頻発する。さらに、無関係だと思っていたA案件とB案件が実は背後で繋がっていた的なオチもよくあって、全体像を勉強しないといけないこともままあり、本当に日本史世界史みたいだなと思いながら日々仕事に苦しんでる。天保の改革だって、アヘン戦争やモリソン号事件への幕府の動揺の結果だったしな、と思いながら。
そして実際に先ほどの現場猫みたいに単純業務ばかりじゃないのが事務職です。事務職って、上の指示通り動けばいいとか、前例踏襲でいいとか、マニュアル通りにすればいいとか、いわゆる深い思考が不要な仕事みたいに言われている。けれども実際は飛んでもない。上の指示なんて来ないし、前例は参考にならない事ばかり起きるし、マニュアルなんて無いし、あっても役に立たなかったりする。こんなことを言うと「じゃあマニュアルを作れば?」と外野から言われるけれど、とどのつまり、今や事務職は対応している業務があまりに多様すぎてマニュアルを整備できないという感覚に近い。私はいま法務をやっているけれど、私の仕事は専門家の下で指示通りに文書を作成することではない。例えばこういうことだ。
なんだかヤバい案件が来た。訴えられたらしい。類似案件を探してみたけど、関係する法律の改正後だから過去の案件は参考にならない。そもそも類似事案と言っても中身が違いすぎる。前任者は退職していない。分かる人は誰もいない。がんばろうにも人手が足りない。この部署には指示を仰ぐ人がいない。法務でも対応するのは事務だ。他部署にヘルプを頼もうにも、どこも忙しそうだ。仕方ないから法律や条例をあたってみる。国が示すひとつ数十ページのガイドラインをいくつも読む。職場の規則も読む。そもそも法律が世の中の現状に追い付いていないからどうしようもない。でもヤバい案件は処理しないといけない。どう対処すれば「正解」なのか、自分の頭で考えないといけない。顧問弁護士は居るけど、そこへもっていく案をすべて考えなければ。考えなければ。考えなければ。職場内から法務相談でよく分からない電話がくる。クレーム対応らしい。それどころではない。それどころではないけど考えなくちゃ。平常業務も面倒な書類作成も備品発注も終わってないけど、考えなければ。さもなくば首が飛ぶ。「正解」から外せば次の案件を生む。
私の毎日はだいたいこんな感じだ。こんな案件が同時並行でじゃんじゃん発生する。この業務をやる前提で採用されているならまだしも、私は法務の知識があるわけでも、その類の資格を持っているわけでもない。前の部署では全然違う業務に携わっていたし、ただ異動でここにあてがわれたから担当している。ただ書類を作って、電話に出て。そんなイメージとは程遠い、専門的で入り組んだ毎日だ。
最近では、せっかくなれた「事務職」を辞めていく人も多い。非常勤だけではなく正規の人もそうだ。思っていたのと違う、こんな仕事なんて聞いていない、責任が重すぎる、定時に帰れない、産休育休が取れない、給与が少ない。事務職の現実へ落胆して辞めていくのだ。事務職は巷で思われているような楽で機械的でマニュアル通りの仕事じゃない。
私もどちらかと言えば、楽さを求めて事務職に就いた。事務がホワイトだとは思っていなかったけど、内定したほかの職種に比べたら楽だろうと考えていた。お給料も少ないけど、あまり残業をしない暮らしをしたかったし、平日に好きなライブとかにも行きたかった。それが事務なら叶うと思っていた。浅はかだった。定時になんて帰れないし、サビ残は横行しているし、何なら土日も仕事しているし、毎日が仕事に搾取されるだけだった。もし自分に子供がいるのなら、安易に事務になるなと言って聞かせたい。でも、だったらどんな仕事がホワイトなのかと言われたら答えに詰まる。ホワイトなんて理想郷みたいなもので実は存在しないんじゃないかと最近では思う。だから皆さん、本当に軽い気持ちで事務職になったらだめです。絶対にだめですよ。
今日は、私の同期のひとりがメンタルがやられて休職に入ったという話が聞こえてきた。鬱屈した私と違って、明るくて快活で強い同期だ。どこで何がどう間違ってこんなことになったのだろうと考えると悲しい。
20時過ぎに帰宅。今日は職場のネットワークがメンテナンスで使えなくなることを大義名分に早く退勤できた。うれしい。帰宅すると先日注文したブレッドケースが届いていた。キッチンにあるスチールラックの棚をスペースを有効活用したくて買ったものだ。これで中にも上にも物が置けるから機能的に使える。金属製で丈夫なつくり。
ちょうどあったからパスコ超熟を宝物のように入れておいた。ブレッドケースと言いつつ何を入れてもいいものだから、今後どう使うかいろいろ試したいところ。夜ご飯は、最近胃が荒れていてもたれ気味だから味噌汁とお茶漬けにした。
どうしてこんなに現実はこんなにもひっ迫しているんだろう。すこし疲れた。
(信頼と実績の山﨑実業)