高等遊民前夜

日記と考え事・雑感のログ

疲労の話、庵野秀明展の話

 土曜日。疲れが取れない。木金とイベント対応業務でHPが尽きた。イベント対応は体力も気も使うからげっそり疲れてよろしくない。最近は週5働くと土日になるころには疲れ切ってしまうと感じる。加齢もあるんだろうか。10代のころの底なしの元気はもうない。

 本当は週末は外出を最低限にして家でゆっくりしたいのだけど、無理にでも活動しないと充実した休日にならないという現実には、実はだいぶ前から気づいていた。というより、家でじっと座ったり寝たりしているとかえって疲れる。ある程度身体を動かさないと関節が死ぬ。関節が死ぬと精神が死ぬ。関節には人間の大事なものが宿っている。

 たぶん、土日ある程度は外出して身体を動かしがてら外的刺激を取り入れて、帰宅して余った時間で本を読んだりネット見たりして、疲れ切ってぐっすり眠るくらいが理想的なんだろう。それを毎週、健康的にできたら困ってないのだけど。

 

 夫が庵野秀明展に行きたいというので、そういえばまだ会期中だったな~と思い一緒に出掛けた。私も夫も、庵野作品と世代がドンピシャではないわけだが、二人ともアニメや映画は好きだから、当たり前のように庵野作品も一通り観てきていた。
 ところで、作品名じゃなくて個人名を掲げた展覧会がもう開催されることに意外なおどろきがある。作家性の強さを感じる。(たとえば宮崎駿はあまり「宮崎駿展」のイメージがない。もうあるのかな?どちらかというと「ジブリ展」みたいな展覧会が多いイメージ。)

 展示の内容としては、庵野氏が影響を受けた作品に関する展示から、学生時代の創作、プロになってから携わった作品に関する展示、今後に関する展示という流れ。原画資料だけじゃなくて、企画段階の資料とか、撮影用のジオラマとか衣装とか、修正指示の細かい資料とかがとにかくたくさんあった。宮崎駿からの発注書(鉛筆走り書き読めない)とかも。よく保管してあったなと感心した。爆発シーンにこだわりがあることは分かっていたけれど原画の細かさを生で見るとその執念に改めて驚けてよかった。

 客層は、たぶん庵野氏のファンだけじゃなく、特撮ファンとか特定の作品シリーズのファン(ウルトラマンとか仮面ライダーとか)も多くて、来場者の熱気みたいなものが異様で凄まじかった。本当に狂おしいくらい好きで好きでたまらない、本来の意味でのオタクたちが集まっている感じだった。ちょっとここだけ磁場が狂っているみたいなあの感じ。あの雰囲気を展覧会で感じるのは最近あまりないかも、と思った。

 エヴァンゲリオンの展示のところの解説に、「難解なストーリーがいろんな考察を生み、ネット上や同人誌で作品の解釈について意見交換する文化を醸成した。今では普通の作品の楽しみ方だが、この作品がきっかけになった文化だ」的なことが書いてあって、エヴァンゲリオンの功罪だなあと感じて印象的だった。この作品で庵野氏自身はネット上で激しい批判に遭っており、そういうネットの嫌な面は今も続いていて、それでもいろんな人の考察を読むことは楽しくて、その流れも私も享受しているという実感があった。

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(↑庵野氏手書きのエヴァ相関図。解釈一致)

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(↑記念撮影スポットなんだろうがフィギュアのディティールを接写している人が多くて印象的だった。)

 展覧会全体を通してみると、ふとこの時代は今にくらべて豊かな日本だったのだろうなと実感した。プロになってからの制作も、会社が予算難といいながらも挑戦的なアニメを作れたり、社会自体もいまより格段に豊かだった面もあるのだろうと感じて、いろいろ思う所があった。(庵野氏の周囲がたまたま資金力があっただけかもしれないけど。)
 また、庵野氏は1960年生まれで、山口県宇部市という地方で戦後の復興期を育っているはずだけど、学生時代の展示からはお金に困っている印象は受けなかった。(昔の画家の展示を見ていると貧乏エピソードは多かったりする。)むしろ、自主製作のために8ミリフィルムのカメラをゲットできたりしていて、実家に余裕があるか、財力のある仲間がいるとしか考えられなかった。地方だと言ってもこだわって創作活動ができる余裕と環境があったのだと思う。(庵野氏と仲間がそうだっただけかもしれないけれど。)

 背景に資金力があることに別に幻滅したりはしない。こういった創作にこだわるためにはお金が当然に必要で、逆に努力だけでどうにかなると思われていることのほうがどうかしていると思うから。才能や努力があることは大前提でしかなくて、いろんなものに挑戦できる環境があってこそなんだろうと強く感じた。努力されすれば身を立てられる世の中じゃないよね現実。今はいろんな技術があって、お金をかけずできることが増えてはいるけれど根本は変わっていないと思う。さらに今の日本は到底余裕のある社会ではないと感じるから、ぜったい埋もれた才能があるだろチクショーと思う。

 そんな感想があったので、展覧会の最後がアニメ特撮アーカイブ機構を立ち上げて特撮資料の保管・保全をしている話とか、若手アニメーターの育成のために頑張っているという話で終わっていて、業界の底上げをする側に回ってくれているのは少し安心した。業界の大御所がこういう役目を担ってくれるのはうれしい。