月曜日。朝から酷暑。湿度も高い。オベサがまた開花している。
オベサはサボテンではなくトウダイグサ(ユーフォルビア)で、葉が退化し茎が多肉化した植物。サボテンではないのに、収斂進化でサボテンに近い形を手に入れた植物だ。そしてオベサは雌雄異株で、種を取るためには雌雄両方を揃える必要があるが、花が咲いてみないと性別がわからない、ひよこ鑑定士もびっくりな仕様だ。それまで自宅のオベサは雄しかおらず、以前お店で買ったオベサ3株の開花待ちをしていたところだ。結果としては、買った3株のうち2株は雌で、これで我が家は雌2株と雄2株の男女比率平等を達成した。引きの強さよ。
(雌株のめしべ。先端に花粉がついていないことから雌とわかる。)
(こちらは雄。黄色い花粉がついている。上の雌株と形や色が違うのは性差ではなく個体差によるもの。)
植物の多くは雌雄同株で、他の植物と交雑しなくても自家受粉してどんどん種を作ることができる。とくに胚がめしべの内部にある「被子植物」のうちのほとんどが雌雄同株で、雌雄異株は全体の6パーセント程度と言われている。その珍しい6パーセントのほうにオベサは入る。あえて雌雄異株であることの意義はあるのだろうか。動物の多くは雌雄が分かれていて、別の性別に出会わない限り交雑ができないわけだけど、動物は植物と違って自分の意志で移動できる。だからこそ多くの動物は、自家受精する楽さよりも、交雑により種の多様性を担保するほうへ向かうのだと思う。(人間も、自家受精で子を作れたら楽なのになと思うけれども、それじゃダメなのだろう。)
でも植物は基本的にはずっとそこにいるのだ。オベサのような植物は、近くに別の株がいないと交雑できない。別株と交雑することで遺伝子の多様性を担保できることを踏まえても、自生地である南アフリカではリスクが高すぎるような気がする。いや、逆に、過酷な環境に耐えるために、雌雄異株で遺伝子の多様性を模索していたようにも思える。
その代わりなのか、オベサはとても簡単に受粉が出来て結実する。サボテンに似た見た目がかわいらしくて、世界中に愛好家がいることで、世界中で増えている。雌雄異株なことも、かえって収集家の心をくすぐっている気がする。オベサに心は無いかもしれないけれど、南アフリカの乾燥した土地から自分の子孫が世界中へ広がるなんて、きっと思ってもいなかったのだろうな。
ところで、珍しい観葉植物がブームになることで、現地で自生する植物が過度に採取されているという現状もある。自生地以外の、とりわけ先進国でこのような植物を欲しがる人が多いからだと思う。現地の人からすれば生活が懸かっているから、自生するその辺の植物を取って輸出する行為自体を咎めることはできないけれど、過剰に現地の株をもてはやすことに私は少し警戒してしまう。博物館や植物園等の展示のために現地の立派な株を購入するのは意義があるだろうけれど、みながみな寄ってたかって、樹齢100年越えの博物館レベルの株を個人で買う今の状況には違和感を覚える。現地の自生株も無限に湧くものでもなく、いつか取りつくす時が来る。
私が自宅に置いている植物はすべて、日本で種から育てられた実生株だ。種だけ輸入して日本で育てられたものや、日本にいる個体からとった種を育てたもの。自生地に生えてた株を輸入したものではない。こういった趣味の背景には自生地の乱獲の問題とか、生態系とかへの問題が常に絡んでいて、私もその近くでその片棒を担いでいるともいえる。でも、自分が楽しければどうでもいい、なんてクソ思考(ひどい言葉ですみません)にはなりたくないわけですよ。だから、私は希少な植物に関しては、現地の輸入株は買わないと決めていて、手の届く範囲で、種から育てたり、国内の生産者が種から育てた株を買っている。野生化して生きてける植物は我が家にほとんどないが、野生化しないよう常々注意している。長く楽しみたいからこそ、そういった部分を意識的に考えていかないとなと、日々思っている。