月曜日。朝起きてすぐに異様な冷え込みに嫌な予感がする。窓を開けると案の定、雪が降っていた。ベランダの手摺りにも積もっている。
同居人は遅番のためまだ寝ている。とりあえず「雪めちゃ降っているよ」と言って家を飛び出た。バス停までほんの数分歩いただけでコートの前面が真っ白になってしまう。ぼた雪がこれでもかというくらいに降っていた。
名古屋はそもそも12月中に雪が降ることさえめずらしい。積雪なんてもってのほかだから、年内にこんなに真っ白になった街を見るのは久々だった。とはいえ、雪が降って嬉しいのは子供だけで、大人になってしまった私には雪の日の通勤はしんどい。バスのダイヤの乱れ、道の渋滞、あらゆることを逆算して通勤しなければいけないからだ。
ここぞとばかりに、こんな雪の日にぴったりの曲を聴きながら職場へ向かう。フシファブリックの「Stockholm」は、この曲も収録されることとなった『CHRONICLE』というアルバムのレコーディングのため、ストックホルムに長期滞在していた最中に生まれた曲だ。雪国ならではの冷え切って澄んだ空気、いく足を阻む積雪、ものさみしい雰囲気が前面に滲んでいて、志村正彦がこの曲にこの曲名をつけたことに深く頷いてしまうような曲だ。私はこれまで何度もこのアルバムを聴き、レコーディングの様子を記録したドキュメンタリーを観た。この七ヶ月後に志村正彦が死んでしまうなんて思わないくらい、いつも通りの志村正彦が映っていた。このアルバムは志村正彦の遺作となってしまった。冬になると必ず聴きたくなる曲だ。
そこらじゅうに雪が積もっていて、私に仕事がなかったらまだ誰も足を踏み入れていない雪原を転げ回ったりしたいなと思った。大人は豊かでつまらないなって思う。大人というより、私がつまらないのだ。
私の執務室はこんな日は特に寒い。職場のエアコンは集中管理により、設定温度を24度より上げられない。後から増築された掘建小屋のようなプレハブ事務室は、温度を上限に設定しても、室内の温度計はマイナス1度。どうかしていると思う。冷蔵庫より寒いじゃないか。
帰宅する頃にはへろへろだった。最近、どうも疲れが取れなくって、寝ても寝ても疲労感が拭えない。肩こりが特にひどくて、右肩から左肩へ鉄の棒に貫かれているように、固く凝り固まっているのだ。家に帰ると途端に眠気が襲ってきて、一度ソファに座ってしまうと気力が底をついて動けなくなってしまう。寒さにやられただけだろうか。ただ甘えているだけだろうか。体力だけが取り柄なのに、自分が自分で無くなったみたいだ。忘れないようにと、アレルギーの薬と、抗うつ剤と睡眠薬を飲んで眠った。