高等遊民前夜

日記と考え事・雑感のログ

幸せそうで何が悪い

 高校時代の友人たち(腐れ縁)による謎オリンピックから一夜明け土曜日。私は8時に起床。なぜか友人の一人はソファで寝ていた。ほんとになぜ? チェックアウトは11時までらしく、四人もいると洗面所が混むから早めに起きて準備をする。

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 洗面所で顔を作っていると、ただでさえ濃いクマがさらに黒くなっていた。5歳老けた感。もともと歳なんて気にしていないからどうでもいいんですけどね。このクマのまま仕事にも行ってやろうと思います。疲れた顔見せないようにちゃんと化粧しろとか言うセクハラ上司もいたりしましたが、そんなの知ったこっちゃねえと思う。
 気分を上げるため最近買ったばかりのスカートを下ろした。シンプルなくせに無駄に高いやつ。同じ見た目ならたぶんユニクロでもあるんだろうけど、生地が丈夫でサラサラしていて通年で履けそうだったからいい買い物をしたんだと思う。こうして少しずつ服をいいものに入れ替えていきたいという気持ちだけはあるんだけど、お金がないからなかなかそれも厳しい。安物に逃げてしまう。友人は最近、値段の安さを理由に妥協して服を買わないよう、欲しい服に対して「3倍の値段でもこれが欲しいのか?」と問いかけるようにした結果、1年近く新しい服を買っていないらしい。もしかして人間は実は服を欲していないのかもしれない。とりあえず痩せたい。

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 11時に解散。昼過ぎに帰宅した。同居人は実家に顔を出しに行ったらしい。洗濯物を洗わずに行きやがった(許しまじ)ので、洗濯機を回す。ベランダに干しながら、やっぱり身体がだるいなと気づく。ワクチンを打った左腕だけじゃなくて全身がだるくて節々がなんとなく痛む。例えると、ひどい風邪が治った後の病み上がりのだるさみたいな感じ。頑張れば動けるんだけど、ふらついてしんどい。体温を測ると微熱がある。最初はポケモンスナップをやって気を紛らわしていたけれど、やっぱり怠くてしばらく寝ることにした。

 夕方ごろ目を覚まし、ニュースを観ていると、昨夜に東京の方であったらしい地下鉄で刃物を振り回した男の件の続報がやっていた。犯人が供述した「幸せそうな女性を見ると殺したいと思うようになった」という言葉にはどうしても衝撃を受けずにはいられない。そうか、女が幸せそうに見えるだけで殺されそうになるのだな、と。犯人は誰でもよかったと言いつつ、女であることを選んでいて明確なフェミサイドだと感じる。無差別的な犯行ではなくて差別的な犯行。普段ふつうに生活している中で、相手が女であるだけで叱っていいとか、上から説教してもいいとか、馬鹿にしていいと無意識に思って行動している人はたくさんいて、相手が女であるだけで男には感じない怒りや恨みや嫉妬をする人がいる(これは男性に限らず女性にもいる。)のはわかっていたけれど、こうして明確に自分の性への殺意に触れると、やりきれない気持ちになる。だからといって、幸せそうだと判断されて殺されないように、不幸でみすぼらしそうな格好で生きていかなければならないのか。そんなの勝手すぎるじゃないか。

 刺されて重傷を負った女子大学生が刺された理由は「勝ち組にみえたから」らしい。自分が持っていないものを全て持っている(ように見える)きらきらした女子に嫉妬をする気持ちは女の私にもわかるけれど、その女の子が勝ち組に見えたのは、本人が真っ当な努力をした結果かもしれないし、幸せそうに見えても実はそうでもないかもしれない。女だから楽だなんて思わないでほしい。自分の些細な幸せを必死に守って生きているのに、ただ「そう見える」だけで殺意を向けられる現実からどうやって自分の身を守ったら良いのかもう分からない。日本の治安がいいだなんて神話だったのだなと思う。神話は解体されるためにある。

 私はブックオフにいって古本とか掘り出し物を探すのが好きで、同居人とよく大型店舗を巡ったりしていた。割と近所にお気に入りの大型店舗があって、同居人と訪れ、一旦店内で解散する。ひとり自分のペースで本を探していると、通路でおじさんとぶつかったんですよ。おじさんは気さくに「ごめんなさいね」と謝ってきて、「今日はお客さんがすごい多いですね」と言うから、まあそういうおじさんなんだろうなと適当に返事をした。ところが、私がどこの本棚に移動してもその人が後からついてきて話しかけてくる。最初は「漫画を探しにきた」と言っていたくせに、私が詩歌のコーナーにいてもしつこくついてくる。終いには「今日は誰と来ているの」「かわいいね」「僕のタイプだな」と粘着質につきまとってくるようになって、流石にまずいなと感じた。私は残念ながら可愛くもないし醜い。容姿の優れている人だけがこういう目に遭うのではないのだ。とうとう身体を触ってくるようになり、私は本を探すのを諦めて同居人と合流した。するとあれだけ私につきまとっていたおじさんが一切視界に入らなくなった。同居人にそのことを言うと、とりあえず店を出ようということになり、店員さんには念のためこのことを伝え、退店した。そのブックオフにはもう行けなくなってしまった。

 こう言うことが普通に生きているだけで何度もある。こういう時に、いやでも私が女という性を持っていて、女体を抱えて生きていて、女であることだけを理由にこういったことに巻き込まれるのだと思わざるを得ない。そして交際相手である同居人は男であり、男が私の隣にいるだけで、私はそういった目に遭わないのだ。いくら気高く生きたって、私を弱者と眼差して、何をしても良いと思う人たちがいる。確かに同居人と二人で歩いているだけで、自分にぶつかってくるサラリーマンも減るし、バス待ちの時に割り込みするお爺さんも減ったし、地下鉄で隣にピッタリ座ってくるおじさんも減った。私は同居人とお付き合いするまで一人の時期が長かったから、交際が始まった時に正直驚いてしまった。その事実に絶望することが人生で何度もある。この怒りをどうしたらいいのだろう。そういったことを夜まで考えて疲れ果ててしまった。