高等遊民前夜

日記と考え事・雑感のログ

前提ありの豊かな日々

 火曜日。暑さが苦手で夏の間は休眠していた多肉植物が目覚め始めて、秋が近づいていることを実感した。この植物は日本の過酷な暑さが苦手で、夏は多湿になり腐りやすくなるため、水を一切あたえずに休眠させる。表面は皮がカリカリに干からびてしまうが、ようやく脱皮をしてきて安心した。ただ枯れて死んでしまっただけなのではないかとヒヤヒヤだった。3か月強の間、水を一滴も浴びずに生き抜く驚異的な強さだ。


コノフィツム・パゲアエ。1センチくらいの小ささ。)

 去年までは「植物は強いから水を与えていればOK」くらいに思っていたから、夏は水を与えすぎると腐ってしまう植物があるなんて衝撃的だった。乾燥した地域原産の植物にとって湿気パラダイスの日本はそれだけ地獄なのだと改めて思い知る。

 多肉植物は見た目のかわいらしさからハマる人が多いけれど、予備知識がないと高確率で枯らしてしまう。しかも同じ多肉植物でも育て方に天と地の差がある。それを知らずに、過度に植物自体の適応能力や生命力を期待して過酷な環境を改善せず、枯れた時に「ハズレを引いてしまった」「私はいつも植物を枯らしてしまう」と悪びれもせず言う人もいるけれど、私はそういう人も見て、後輩クラッシャーのパワハラ上司みたいだな、と思っているのは内緒。相手の適応力を勝手に過信して、相手の許容範囲を超える状況に置いて、なにかあったら「忍耐力がない」とこき下ろす。何事も観察と勉強が必要だなと自戒をこめて。

 最近、挽きたての豆でコーヒーを淹れたくてミルを買った。いつもは豆屋で挽いたものを買っていたが、買った当初の豆は新鮮だけど時間がたつと味が落ちるから結局ミルを導入した。手挽きにしようかとも思ったけれど、粗さを調節できる電動ミルにした。まあとりあえず程度だから、価格と利便性と口コミの交点みたいなものに決めた。今のところ問題なし。刃の部分が金属刃じゃないから洗いやすいのと、挽いた豆を受けるよう気がガラス製なところが決定打だ。

 挽きたての豆はお湯を注いだ時の膨らみ方が段違いで、味も濃い。香りもいい。虚無の朝にひとすじの張り合いが生まれる心地だ。これで毎日挽き立てのコーヒーが飲めるのだ。またQOLが上がってしまう。
 ただ、毎日挽きたてが飲めるというのはあくまで設備面の問題であって、毎日コーヒーを淹れるのも自分、ミルを解体して掃除するのも自分だ。毎日豆を挽いておいしいコーヒーを飲むには、余裕をもって朝早く起きる生活が前提となっている。早く起きるのは早く寝なければいけないし、余計な疲れを溜めずに次の日を迎える働き方が必要だ。定期的に新鮮な豆を買う財力も必要だし、定期的に店へ行き豆を買う暇と元気も不可欠だ。昨日も今日も明日もずっと連綿と分かちがたく繋がっている。豊かな日々は結局は余裕のある生活ということだろうか。耳が痛い。

(これを買いました。)