高等遊民前夜

日記と考え事・雑感のログ

私の頭の中はいつもうるさい

 私は頭の中では絶えず独り言を続けているような感じで、基本的にそれが止まることはない。何かに没頭して自分を忘れ手放している時くらいで、それ以外の意識があるときは常に何かを考えている。

 例えば、私が歩道をひとりで歩いているとする。かなり向こう側、200m先くらい、人が歩いてくるのが見える。このまま行くとその人とぶつかる。だから私が避けるか、相手が避けてくれるかしなければぶつかる。(ところで道端のあじさいがきれいだ。)相手はスマホを見ながら歩いているし、このままでは私に気付かないかもしれない。その人がスマホから顔を上げる気配はない。(ローソンがセブンイレブンかどちらに行こうか。)だから私が避けなければならない……みたいなことをずっと考えてしまう。だから私の頭の中はいつもうるさくて落ち着かない。自分で考えようと意識しなくても勝手に思考が湧き出てくる感じだ。私にとってはうるさいのがデフォルトで、こういうものだと思って生きているし、みんな多かれ少なかれ、頭の中では常に独り言をいうように考え事をしていると思っている。
 この性質は、時には「周囲がよく見えている」「些細なことに気づけている」と言われることもあるけれど、悪く言えば「注意力散漫」だ。仕事をしている時にも、そろそろ机が汚いから掃除したい、デスクトップもファイルが散らかってきたから整理したい、メールも整理しなくちゃ、もう10時だ、そういえば先週保留にした案件ってどうなっていたっけ?、最近あの課の若手の人見ないけど休職しているのだろうか…と耐えずどうでもいいことが頭を駆け巡る。目の前の作業に集中するよう、常に理性的であることが求められている気がして窮屈だ。あまりに脳内がうるさすぎて、「私はADHDではないか」という考えが過ぎることもある。

 私の交際相手である同居人は、私とは違い、常に頭の中が空っぽに近いらしい。同居人がぼーっとしている時に、「何を考えているの」と訊ねると、「え?何も考えてないけど…」と不思議な顔をして返される。どうやら本当に何一つ考えていないらしく、ぼーとしている間に自分が何をしていたかさえ思い出せないらしい。それが同居人にとってのデフォルトで、彼にとって思考するとは、意識的に考えようと思わないとしない行為であるらしい。考えたとしても、「お腹すいたな」「焼肉たべたい」くらいのスケール感で、私に脳内とはどうも様子が異なっている。
 そんな同居人は大らかで、あまりストレスも溜め込まないタイプだ。自宅に愚痴を持ち帰ることさえなく、そもそも愚痴を誰かに話す文化がないらしい。その場は辛くて怒れてイライラしても、おそらく私のように脳内で反芻することがないから、時間が経つと忘れてしまう。美味しいものを食べれば忘れるし、たくさん眠ればより忘れる。一緒に暮らしていると、本当に余計なことを考えていないことが分かった。ご飯と食べているときは目の前のごはんが美味しいということにただただ集中している。自分との違いに圧倒される。

 金曜日。同居人は夜勤のため不在。それでも私の頭の中はうるさい。そんなことを思いつつ出勤した。

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